研究会について
発足の趣旨
昨今、言語問題が社会的に注目される度合いが増してきました。「英語帝国主義論」は2~3年来、論争が続いていますし、昨年は『多言語主義とは何か』(三浦信孝編、藤原書店)がいろいろなところで大きくとりあげられました。フランスでも、反フロン・ナショナルの先陣を張る地理学者 Yves Lacoste が、逆説的タイトル 『ナシオン万歳』 Vive la nation を掲げる著書のなかで、言語問題の社会的重要性を訴え、また、『ナシオンの源泉としての言語』 La langue, source de la nation と題された言語思想史的撰文集が出版され、大いに評判となりました。
本研究会はこうした時流に乗るというわけでは決してありませんが、社会的な言語問題を大いに論じ合う機は熟したということで、これをもっぱら論じあう場を提供しようとするものです。言語問題に的を絞った研究会というわけですが、呼びかけ人としては具体的テーマとして次のような題材を考えています。
地域的民族的少数派、移民・外国人労働者の言語文化的問題・要求/復権運動、言語政策
Linguistic Imperialism, Francophonie といった言語覇権主義と多言語主義、国際的組織での言語使用
言語侵略史、植民地(時代)およびポスト・コロニアルの言語問題
国語・標準語の形成/歴史、方言・民衆言語などとの権力関係、言語政策
多言語社会の形成/現実、その言語紛争、また言語政策/戦略
多言語的メディア・コミュニケーション論、バイリンガル教育その他多言語社会に関する諸問題
言語という題材にかかわるテーマ研究会ですので、学問領域的所属/ディシプリンにとらわれることなく、メンバーを募りたいと思います。とりあえず大学院生以上の研究者を対象にして、「論争を巻き起こす場」をめざします。研究会は隔月(ないし2~3カ月)に一度ほどのペースで開く予定です。研究会での報告は活字化することを原則にします。そのための雑誌も企画中です。これについては研究会のなかで企画を発展できれば、と考えています。
1998年6月16日
(呼びかけ人 原聖)