第101回多言語社会研究会例会【開催日:2025年4月19日(土)】
第101回多言語社会研究会例会を、以下の要領にて開催いたします
皆さま、ふるってご参加ください。
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日時:2025年4月19日(土)14:00-18:00
会場:東京大学(本郷キャンパス)東洋文化研究所大会議室(3階)
https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/access/index.html
参加費:500円(オンライン・対面)
※対面参加者は会場でお支払い下さい。
※オンライン参加者は例会終了後、下記Zoom登録フォームに入力されたメールアドレス宛てに支払い方法を連絡致します。
研究会はオンライン(Zoom)でも参加頂けます。
オンラインでの参加を希望される方は、以下のフォームからお申し込み下さい。
https://zoom.us/meeting/register/19PuzArjTO2RmvuLVGNPMw
(以下、各報告の開始時間はおおよその目安ですので、若干前後する可能性もあります。)
<報告1> 14:00-16:00
発表題目:日本における継承語モンゴル語教育について-多摩地区のモンゴル語教室の取り組み-
報告者:烏日哲(国立国語研究所)・市川章子(国立国語研究所)
概要:
文化的、言語的に多様な背景を持つ子どものアイデンティティの形成に必要不可欠な母語・ 継承語に関しては、その重要性が認識されながらも、日本国内の公教育、特に小中学校といった義務教育課程において教育実践がなされることは少なく、 NPO、ボランティアがいわゆる母語教室の運営母体となるケースが大半を占める(田・櫻井、2017)。本研究の目的は、東京の「ナヒヤモンゴル人親子サークル」の取り組みを通して日本に定住しているモンゴル人児童生徒に対する継承語モンゴル語教育の現状と必要性について考えることである。
本研究では、複言語環境におかれている中国をルーツに持つモンゴル人児童生徒が通う母語教室に注目し、その取り組みを記録し検討した。2021年文部科学省の統計によると、日本語指導を必要する外国人児童生徒の母語別の比率では、ポルトガル語が最も多く、その次には中国語、フィリピノ語、スペイン語が並ぶ。言語別に行われた統計では、本研究の対象者である中国をルーツに持つモンゴル人児童生徒は往々にして「モンゴル語」ではなく「中国語」で統計される可能性が高い。こうした継承語がいわゆる一般的に知られている「メジャー言語」ではないゆえに軽視されてしまいがちな外国人児童生徒の教育上のニーズを把握することも、言語の多様性を受け入れた教育の保障とマイノリティ言語の保護の実現にとって必要不可欠ではないかと思われる。
<報告2> 16:00-18:00
発表題目:『地域諸言語遺産の保護と促進のための法律』に関わる議事録の言語学的分析
報告者:宮腰 駿 (東京大学大学院博士後期課程)
概要:
本発表では2021年にフランスにおいて公布された『地域諸言語遺産の保護と促進のための法律』(LOI n°2021-641 du 21 mai 2021 relative à la protection patrimoniale des langues régionales et à leur promotion, 通称モラック法) に関わる国会議事録の言語学的分析を行う。モラック法は特に地域言語のイマージョン教育に関わるものとして提案されたが、その成立の過程において特に憲法条文との関係をめぐり様々な議論が行われた。本発表では「モラック法が<どのように>議論されてきたのか?」という問いを設定し議事録の分析を行う。議事録のテクスト本体に注目し、このテクストが言語形式を通じてどのように構築されているのかを詳細に観察する。本発表では2020年2月5日に行われた文化教育委員会 (Commission des affaires culturelles et de l’éducation) の議事録 (https://www.assemblee-nationale.fr/dyn/15/comptes-rendus/cion-cedu/l15cion-cedu1920024_compte-rendu) におけるモラック法に関連した部分を対象として議論を行う。最初にこの議事録の全体的な構造 (議事進行、発言者、取り上げられたテーマ等) を示す。次にこのテクストを検討するにあたり特筆に値する副詞・副詞類について分析を行う。副詞・副詞類は態度の表明や文接続に関わり、テクストの構築を検討する際に不可欠の要素といえる。最後に今後の課題として、本発表で取り扱うことができなかった他の関連テクストについて述べる。
キーワード:フランスの言語政策、モラック法、副詞・副詞類