第80回多言語社会研究会例会のお知らせ

多言語社会研究会第80回東京例会を、下記の通り開催いたします。

みなさまふるってご参加いただきますよう、お願いいたします。

日時:2019年6月22日(土)午後2時~6時

会場:東京大学東洋文化研究所3階、第1会議室

(http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/access/index.html )

資料代:500円

<報告1>

タイトル 日本社会におけるイタリア語(風)表記の象徴的機能ー言語景観の事例分析

報告者:ステファノ・ロチーニョ Stefano Lo Cigno(京都大学人間環境学研究科)

概要 日本で90年代に人気を博し始めたイタリアンブームの勢いが止まらないようである。イタリア料理やイタリアの輸入品、衣料品、高級車を愛し買い求める人は常に多く、その勢いでイタリア語の学習に挑む人もいる。その中、数多くの店名に使用されているイタリア語が日本の言語景観に大きく貢献していると思われる。しかし、そもそも日本人によるイタリアという国に対するイメージはどういったものなのかは未だ調査によって明白にされてきていない。それは、日本の町でしばしば見かけるイタリア語の表示を見れば肯定的なものであると推測できるが、具体的にどのように概念化されているかについての報告が見当たらない。また、経営者によるイタリア語自体の使用の裏にどのような概念、理由、目的もしくは期待などがあるかについても考察なされていない。

 本研究では質的アプローチ及び分析で日本におけるイタリアのイメージおよびイタリア語の使用実態を調査する。とりわけ、言語景観の観点からみて、日本人が営んでいるイタリアに関連のある店舗の看板に用いられているイタリア語のイメージと実際どのように産出されるかを探る。それは、飲食、ファッションなどといった業界に携わる日本人の経営者がイタリアに対しどのようなイメージを抱いており、そしてどのような基準で自分の店舗にイタリア語を使用したかを明らかにする調査にあたる。

キーワード: 日本、言語景観、イタリア、イタリア語、店名


<報告2>

タイトル バスク語の新話者の家庭における言語アイデンティティと家庭言語政策——ビルバオ都市圏でのインタビュー調査に関する報告——

報告者 アインゲル・アロツ Aingeru Aroz(上智大学外国語学部イスパニア語学科)

概要 バスク語はスペイン北部とフランス南西部にまたがるバスク(Euskal Herria)で話されている少数言語である。バスク語話者の大多数が集中するスペイン領バスク自治州(Euskal Autonomia

Erkidegoa、以下EAE)では、1970〜80年代から現在に至る活発な言語復興運動と言語政策の影響により、バスク語話者の数は継続的に増加し、バスク語の使用は教育、メディア、公共機関といった領域に次第に広がってきた。このような過程を経て、現在EAEには、家族からバスク語を継承した「母語話者」にならび、バスク語を学校教育で習得した多くの「新話者」(hiztun berriak)がおり、なおかつ後者の数は近い未来に前者の数を上回ると見積もられる(現在、新話者はすでにEAEの50歳以下の話者の過半数を占めている)。

 本発表では、自分の子どもをバスク語で育てることを選択した新話者に関する研究調査を紹介する。調査では、バスク最大の都市でありながら、バスク語使用の程度が比較的低いビルバオとその郊外(ビルバオ都市圏、Bilboaldea)に住んでいる10名の研究協力者と半構造化インタビューを行い、インタビューから得たデータを分析した。今回の報告では、まず少数言語の新話者に関する先行文献および研究手法を紹介してから、研究協力者のバスク語話者としてのアイデンティティ、そして彼女・彼らが自らの子どもをバスク語で育てるにあたって家庭における言語使用をどう考え、どう計画し、どう行なっているかについて述べる。

キーワード: バスク語、少数言語の新話者、言語アイデンティティ、家庭言語政策