第95回多言語社会研究会例会のお知らせ
日時:2023年10月28日(土)13:30-17:30 ※ 通常よりも30分早い時間帯になりますのでお気をつけください。
会場:東洋大学白山キャンパス6号館 第3会議室(正門からですと、まっすぐ進んだ先にあるエスカレーターを降りて進めば6号館です。西門からですと、そのまま6号館に入ります)
https://www.toyo.ac.jp/about/introducing/access/
参加費:500円(資料代として)
なお、今回の研究会はオンライン(Zoom)でも参加いただけます。
オンラインでの参加を希望される方は以下のフォームからお申し込みください。
https://zoom.us/meeting/register/tJIvdu-rpzkqGd2HVHneWWvBYwO5r78meLGp
<報告1>
タイトル 帝政ロシアにおける言語思想〜シベリア地方主義者を事例とした研究序説〜
報告者 渡邊日日(東京大学)
概要 しばしば「諸民族の牢獄」と評されるロシア帝国。多民族帝国としてのロシアとは,同時に,多言語帝国であったはずである。だが,帝政ロシアにおける言語思想について知られていることは少ない。帝国の多様な構成を考える一つの指標として,言語は明確に捉えられていたのだろうか。それとも,宗教や民族など他の指標よりも副次的な位置づけにあったのだろうか。本報告ではこうした大きな問題意識のもと,シベリア地方主義者を例にとり,彼らがシベリア諸言語をどう捉え,言語をアジェンダに設定したのか,あるいは設定できなかったのか,萌芽的議論を試みる。また同時に,「ロシア化(ロシア語化)」という概念の使い方の是非についても考えていきたい。
<報告2>
タイトル 山田孝雄の本居宣長への再評価を再考する
報告者 ジョナサン・パンターボルド / Jonathan Puntervold(オーフス大学(デンマーク)博士課程学生)
概要 日本語研究は西洋言語学からの影響を色濃く受けていたといっても過言ではないであろう。はじめて日本語研究の西洋化に対して極めて強硬な反抗をしたのは山田孝雄(1875-1957)であると考える。山田は、西洋言語学と日本伝統的な語学が根本的に相容れないと主張し、西洋思想の影響によって「国語学」が起源から迷走してしまったと訴えた。この関連で注目されるのは本居宣長の著した『詞の玉緒』(1785年)の「真義」を誤解しているとして、同時代の日本語学者を山田が非難したことである。
本発表では、今までの山田学説研究からわずかに触れられながらも未だ批評的に考察されていない一つの問題、すなわち山田が日本の伝統的な語学の真の後継者を自称するための「係助詞」の起源を議題にしていきたい。その起源を探る手掛かりとして、山田が残した『日本文法論』自筆原稿を取り上げて、『日本文法論上巻』(1902年)から『日本文法論全巻』(1908年)に至るまでに、山田の「係助詞」観がどのような変遷を遂げてきたかを見ていきたい。そこではその「係助詞」観はどの程度まで宣長から影響に受けたのか、どの程度まで西洋文法論から影響を受けたのかを論考していきたい。このことを通じて、山田が唱導した「真の国語学」の由来の解明に新たな視座から取り組もうとするものである。