第99回多言語社会研究会例会のお知らせ

第99回多言語社会研究会東京例会を、10月26日(土)に、以下の要領にて開催いたします。

みなさま、奮ってご参加ください。


日時:2024年10月26日(土)14:00-18:00

会場:東京大学(本郷キャンパス)東洋文化研究所3階第1会議室

   https://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/access/index.html

参加費:500円(オンライン・対面)

※対面参加者は会場でお支払いください。

※オンライン参加者は、例会終了後、下記Zoom登録フォームに入力されたメールアドレス宛てに支払い方法を連絡いたします。


研究会はオンライン(Zoom)でも参加いただけます。

オンラインでの参加を希望される方は以下のフォームからお申し込みください。

https://hyogo-u-ac-jp.zoom.us/meeting/register/tZ0lcuiqqj4qGtaiZxhqT9GFoMLJ8PXmdE25


(以下、各報告の開始時間はおおよその目安ですので、若干前後する可能性もあります。)


<報告1> 14:00-16:00

タイトル「日本における精神障害当事者のアイデンティティの揺らぎ:インタビュー・ナラティブ分析から見えてくる他者との関係性」

報告者:周 氷竹(大阪大学大学院)

概要:

 本発表は社会言語学的なアプローチを通じて、複数の社会関係における精神障害当事者らの複相性を持つアイデンティティを解明し、当事者の生きる社会に潜む規範を浮き彫りにするものである。

 本発表の分析対象とする談話データは、筆者(ZB)が2019年11月から2022年11月にかけて、精神障害(統合失調症、うつ病、双極性障害など)を持ち日本で生活する13人16組(同じ人物へのフォローアップインタビューを含む)に対し、対面あるいはオンライン通話(Zoom)の形でインタビュー調査を実施して得たものである。

 当事者の語りへの分析を通じて、(1)「働く」能力を中心とした社会的遂行能力、(2)社会的な理解度、いわゆる他者に推測される、生きづらさの程度、(3)知的・美的な基準があると考察できる。上記の基準により、精神障害当事者間で序列化が起こる。

 本発表は当事者の人間的なつながりを対象に、談話分析に基づいて、多様性に富む当事者の関係性と、障害者コミュニティの行動規範と健常者社会の社会規範に関する知見を提示したものであり、当事者に対するさらなる理解、当事者の置かれている社会的状況の可視化に資することを願う。

キーワード:精神障害、談話分析、関係性、ナラティブ


<報告2> 16:00-18:00

タイトル「スコットランド・ゲール語の活性化の軌跡と展望―スコットランド・ゲール語法を中心に」

報告者:米山優子(静岡県立大学)

概要:

 2005年に制定されたスコットランド・ゲール語法は、スコットランドの地域言語の一つであるスコットランド・ゲール語を公用語として定めている。同法に基づく言語政策によって、伝統的なゲール語圏以外の地域でもゲール語の社会的地位への認識が定着してきた。特に、ゲール語を通した教授法を採用する学校の増加は、地域言語の教育に対する需要が高まった結果と言える。イギリスの2022年の国勢調査によると、ゲール語を話す・読む・書く・理解する能力のうちいずれかの能力があると回答したのはスコットランド住民の2.5%(約13万人)で、前回2011年の国勢調査の1.7%(約87,000人)より増加している。そのほぼ全員が英語を併用するが、英語を主要な言語とする者だけではなく、移民のルーツをもつ者も含めてスコットランド全域の住民にゲール語学習を促す言語政策からは、ゲール語をナショナル・アイデンティティーの表象と位置づけるスコットランド政府の意図が窺える。本発表では、制定から約20年を経たゲール語法の成果と課題について、ゲール語教育と関連づけて考察する。

キーワード:スコットランド・ゲール語、公用語、言語政策、ナショナル・アイデンティティー、地域言語の教育